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第4話 母との再会

Author: Jaja
last update Last Updated: 2025-12-03 02:45:57

 その日の夜。

 夕方頃に梓とはバイバイしてからも家でこれからの事を考えていると、母さんが帰ってきた。

 「あんた、今日学校サボったんですって? 一体何やってるのよ」

 どうやら学校から母さんに連絡がいってたらしい。ぷんぷんと怒ってる母さんをぼーっと見ていると自然と涙が出てしまった。

 「な、なによ。どうしたの? どこか体調が悪いの?」

 「な、なんでもない」

 急に涙を流した俺を見て母さんはアタフタしている。口調は厳しいけど優しい母さんだった。

 自分の事を後回しにして、俺の学費やらを捻出する為に必死に働いてくれていた。

 恩返しする前に亡くなってどれだけ泣いたか。

 「もう。明日はちゃんと行きなさいね」

 「うん」

 俺の頭をポンポンと叩いて台所に向かう。

 しかし、今日はご飯は用意してるのです。梓が。

 「あら? ご飯作ってくれたの?」

 「梓が来てたから」

 「よく出来た子ね〜。あんた、あの子は手放しちゃだめよ?」

 「分かってる」

 幼稚園からずっと一緒だった事もあり、梓と母さんは仲が良い。

 というより、向こうの家とは家族ぐるみの仲だ。

 母子家庭同士助け合いながら頑張ってきた。

 「じゃあ頂いちゃいましょうか」

 出来ていた晩御飯をレンチンして、テーブルに並べる。

 「「いただきます」」

 うまっ。え? うまっ!

 「あら? とても美味しいわね?」

 生姜焼きにご飯と味噌汁。至って普通のメニューなのに、高級料理かってぐらい美味い。

 いや、確かに未来での梓は料理が上手だったけども。ここまでの味じゃなかったぞ?

 「これがスキルの効果か? 一流シェフレベルじゃん」

 「? 何か言った?」

 「ううん」

 梓の料理のレベルは5だったはず。

 5でこれだけの味って…。10になったらどうなるんだ。これはスキルの検証も早い事しておいた方が良さそうだ。

 「はぁー、美味しかった。あの子は良いお嫁さんになるわね」

 「それは間違いない」

 実際良いお嫁さんだった。

 俺はガラケーを操作して梓にメールを送る。

 久々すぎたけど体は覚えてるもんだな。

 スマホの便利さに慣れてたけど、ぽちぽちと押すのがなんか懐かしく新鮮だ。

 『料理がべらぼうに美味しいんだけど』

 『私も家でびっくりしたわ。ママにどうやったのかって詳しく聞かれたぐらいよ』

 メールを送ったらすぐに返ってきた。

 向こうも驚いてた様子。って事は特別な事は何もしてないのか。当たり前の様に出来るって事だよな。

 「これは早い事お金を稼がないと。ふむむむ! 唸れ! 俺の競馬知識!」

 「何言ってるのか知らないけど、早くお風呂入っちゃいなさいよー」

 台所で洗い物をしていた母さんにお小言を言われたのですぐに黙る。

 なんか幸せだな。母さんが居るからだろうか。

 この幸せは逃したくありませぬ。

 お風呂に入って自分の部屋へ。部屋といっても襖で区切られてるだけだけど。AVなんて見ようものならすぐにバレる。

 なんなら静かに自家発電しても匂いでバレるだろう。

 それはさておき。

 「今週の競馬はなんだったかな」

 ガラケーをぽちぽち。

 未来程気軽に調べられないのが痛いな。

 スマホが普及するのはもう少し先なんだよな。

 「第4回ヴィクトリアマイルかって…うぇぇ」

 出走予定表を見て思わずため息。

 それを見て一着になる馬はすぐに分かった。

 これ、単勝の倍率2倍いかないんじゃなかったっけ?

 「確かウオッ○の圧勝だったはずだけど…」

 うーん…。2.3着なんだったかな。

 確かそれなりに荒れた筈なんだけど…。

 思い出せん。競馬雑誌を買ってくるべきだな。俺の競馬のスキルレベルは5なんだ。梓の料理の事もあるし、知識を増やせば何か変わるかもしれん

 そうと決まれば善は急げ。

 早速コンビニに出発だ。

 「母さん。ちょっとコンビニに行ってくる」

 「こんな時間に? すぐ帰ってきなさいよ?」

 「はいはーい」

 時刻は既に22時過ぎ。

 健全な中学生が出歩いて良い時間ではない。

 しかし、思いついてしまったら早く調べたくなるのだから仕方ない。

 運良く競馬雑誌が売ってれば良いんだけど。

 そう思いながら俺は財布を手に持って家から飛び出した。

 「うむむむむむ」

 無事コンビニから帰宅して、競馬雑誌を購入。

 財布の中には6000円程入っていた。貧乏家の中学生にしては中々持ってるなと思ったけど、これは今週末の競馬資金にもなる。無駄には出来ない。

 帰宅してからまた部屋に戻り、独り言をぶつぶつと呟きながら勉強中。

 「外人騎手が居ないって新鮮だな。必殺の困ったらルメー○が使えない」

 雑誌をペラペラとめくり唸っていると急にピンときた。

 「あ、2.3着はこの2頭だ。なんか急に思い出したんだけど」

 動画サイトではこのレースを何度か見た事はある。それのお陰か、頭の中にレース映像が思い出された。

 「これがスキルの効果か? 勉強すればするほど効果があるのかね?」

 今回はレース映像を見た事あったからなんとかなったとか?

 それならちょっと困るなぁ。昔の競馬のレース映像は有名馬しか見てないんだよな。

 いや、一回はサラッと見たっけ? ちょっと覚えていない。

 「実際競馬場に行って新馬戦とかも見て考えてみるか。日曜日は早起きだぞ」

 いやはや。なんとか金稼ぎに目処が立って良かった。後はバレない事を祈るのみ。

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